異端の流儀:TAMAKOの脳内宇宙

2026年8月、SHUGYOKUはブランド創業15周年という大きな節目を迎えます。この15年間、ブランドの歩みを間近で追ってきたライター・サカイが、今あらためて切り込みたいテーマがあります。それは、業界の常識を華麗にスルーし、「異次元」「変人」とまで称される稀有な存在である創業者・TAMAKOのモノづくりの真髄について。どこにも明かされていない(できなかった!?)、突き抜けた美学、流儀の裏側に迫ります。

サカイナオミさん

美容ライター。美容室勤務、美容ジャーナリスト齋藤薫氏のアシスタントを経て、美容ライターとして独立。「25ans」、「VOGUE GIRL」、「WWDJAPAN」、「fashionsnap.com」など、女性誌やWEB、百貨店媒体、広告、書籍などさまざまなメディアで執筆中。

Instagram:@neonaomineco5

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Vol.3:壮絶な介護を乗り越えて。
「ウェルエイジング」を人生の基盤に



SAKAI:40代後半で義理のご両親の介護を経験されたんですよね。会社を経営しながら毎週末実家に通い、最終的には同居して、寝たきりのお義母さまの下のお世話までされていたとか……。


TAMAKO:そうなんです。覚悟して臨んだとはいえ、なかなか壮絶でした。本来なら60代くらいで経験するような介護のすべてを、実の親の介護もまだしていない40代のうちに前倒しで一通りやったので。


SAKAI:コロナ禍を乗り越え、会社も「これから」という大切な時期でしたよね。


TAMAKO:そうですね。夫は一人息子だし、実の親のことだからこそ、「同居は嫌だ」と言いつつもどこかモヤモヤしているのが伝わってきて。私はその空気と一緒に生きるくらいなら、問題の根源へ自ら行ってしまった方が楽だなと思ったんです。


SAKAI:ええっ!? それで決断を?


TAMAKO:問題を先延ばしにせず、パッと片付けたいタイプなんです。嫌なことに対峙するのは当然怖いんですけど、それよりも自分でナイフを持って執刀してしちゃった方が早いし楽になると思ってしまうような性質なので(笑)。


SAKAI:わかるような、わからないような(笑)。でも、実際の同居生活はきれい事だけでは済まなかったのでは?

TAMAKO:それはもう(笑)。ただ、物理的なお世話よりも、「メンタルのすれ違い」がいちばん堪えましたね。専業主婦として生きてきた義母にとって、「女性の経営者」という私の存在は理解の範疇を超えていたと思うんです。「夫に守られているから、あなたはお小遣い稼ぎに外で仕事ができるのね」と言われたり。


SAKAI:心身を削ってお世話してるのに、そんなふうに言われてしまうのは辛すぎますね……。


TAMAKO:私は経済的にも完全に自立し、お互いを対等なパートナーとする結婚生活を築いてきました。だから外で夫を「主人」とは呼びません。専業主婦という生き方を否定するつもりは全くありませんが、そうした私の生き方やパートナーシップのあり方が、いちばん身近な家族に理解されないストレスは、やはり辛いものがありました。食事を作っても「うちの味と違うわね」と拒絶され、一時は本当に「離婚」の二文字が頭をよぎるほどの極限状態でした。


SAKAI:その極限状態を、どうやって乗り越えたのですか?


TAMAKO:立ち止まっていても始まらないので、現実をまるでRPGゲームを攻略するように、徹底的に俯瞰して捉え直したんです。義母はつねに「自分が世界の中心の姫」でいたい人でした。その性質や構造を理解し受け入れた上で、ロジカルで感情論に流されない金融出身の夫とタッグを組み、一つの大きなミッションに挑み乗り越えました。この経験で、夫とは「同志」として絆が深まった気がします。


SAKAI:そんなお義母さまも、昨年他界されました。死が近づくにつれ、関係性にも変化があったそうですね。


TAMAKO:身体が弱ると、生存本能からか、いちばんお世話をする私を「上の立ち位置」に置くようになったんです。私の前でわざと小さな女の子のように振る舞い、気に入られようとし始めたり。「人は自分が生きるために、無自覚にこうやって生きていく動物なんだ」と学びになったと同時に、かつての日本女性の生き方を垣間見た気がして、彼女もまた時代の犠牲者だったのではないかと、少し切なくもなりました。


SAKAI:壮絶な介護生活の中でも、救いになったことはありましたか?


TAMAKO:後から知ったのですが、義母が夫に「世の中に、こんなにいいお嫁さんはいないわよ」って言ってくれてたみたいで。


SAKAI:最後の最後に、最高の言葉を遺してくださったのですね……!


TAMAKO:複雑な気持ちもありますが、やって良かったなと思えました。それと、評価されたことよりも、いつも肩肘を張って人を認められなかった人が、死の間際にやっと肩の荷を下ろして、自分の心に素直になれたことが嬉しかったですね。義母自身が最後に楽になれたんじゃないかな、カルマが抜けたんじゃないかなと思えて、心から報われる思いがしました。

SAKAI:そんな死生観に触れる経験を経て、ご自身の「美容」に対する価値観はどう変わりましたか?


TAMAKO:これまでエイジングケアの大切さを発信してきましたが、年齢に抗うアンチエイジングではなく、健やかに歳を重ねる「ウェルエイジング」を人生の基盤に据えなければ無理があるなと、改めて考えるようになりました。じゃあ、何のために美を磨くのかと言ったら、それは「心が削られないため」。歳を重ねれば体力も精神力も自然と落ちていくもの。その時に自分が腐らないための自分磨きこそが、真の美容だと思うんです。心が腐りそうなときに立て直すのってすごく難しいから、まずは髪をトリートメントしてみるとか、食事を見直してみるとか、外側から少しずつ磨いていく。そうすると心に余裕ができて、人にも優しくなれるし、幸せの連鎖が生まれるんですよね。私は見た目が完璧なのに話すとどこか違和感があるような、中身が育っていない薄切りハムのような綺麗さには興味がなくて(笑)。目指したいのは、心身ともに成熟した、いい意味で説得力のある「人間」としての美しさ。10年、20年を歳月をかけて美味しくなるワインのように、年齢を重ねるほどに深まる美しさの文化を広げていきたいと思っています。


SAKAI:辛かった経験さえも全て、美しさの材料にされているのですね!


TAMAKO:ただ「辛かった」で終わらせたらもったいないですから。人の本性が出る瞬間にどうあるべきか私はすごく考えていて。やっぱり、自分自身に嘘はつかないこと。小さく力まずに、どんな状況であっても目の前の人のために何かを差し出せる人間性を引き出しに持っていたい。笑顔でも、温かい声かけでもいい。そこから無言で滲み出るものこそが本物の清潔感であり、美しさなんだと思うんです。



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